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おやすみホログラム再録ベストアルバム「1」を聴いて ~過去との決別になる最高傑作~

 

8月のRising Sunが終わり大きい虚無感に襲われたのか、自宅や車内で全く音楽を聴く気にもなれず、もう10月も終わろうとしている。

リリース日には届いていたおやすみホログラムから先月リリースされた再録ベストアルバム「1」をやっと昨日聴いた。

ところがこのアルバム、どうやら界隈で賛否が真っ二つに分かれているようで、自分も聴いて少し感じた事があるので忘れないうちにブログに書き留めておく。

 

(注) 以下、あくまで個人的な意見です。


総論 ~高い完成度~

各曲について細かく述べていくと長くなりそうなので、まず全体を通しての感想を。

 

この「1」は おやすみホログラムが今までにリリースしたどの作品よりも完成度の高い「ベスト」アルバムである。

 

音の整いざまやその粒度、楽器の鳴りとテンポ、ボーカルの位置や楽器音との分離具合、バンドサウンドの各要素が可聴帯域の全てにおいてバランスよく配置され、性能の高い(だろう)コンプレッサーによって非常に高い音圧がレンジ感を失わないギリギリのクオリティで確保されている。

今までの作品では分離の問題で聞き取りにくかった歌詞も細かい言い回しまで明瞭に聞き取ることができ、加えてギターやドラムの音に迫力があり、それでいてボリュームを上げても耳障りにならない様、上手に調整されている。

近年のデジタルミュージック製作に精通した技術力の高いエンジニアが始めから最終形を想定し、レコーディングからマスタリングまで一貫して関わっているものと想像できる。聴いていて気持ちが良く全く綻びや気持ち悪さを一切感じさせないとてもレベルの高いアルバムである。

そして何より1stアルバムの頃より二人とも歌唱力が格段に上がっている。低音から高音までよく伸びていてキーのずれもないように聴こえる。一時期は週に2回以上の多忙なペースでライブをこなし、その合間にボイストレーニングなどを地道にやってきた成果が確実に形になっている。

以上のことから、これよりはじめて「おやすみホログラム」に触れる人なら間違いなくまず一番初めに聴くことをお勧めする正真正銘の「ベストアルバム」と言える。


漂う違和感

「1」は単なるベストアルバムではなく全曲を「再録」している。今までのアルバムはそれぞれのタイミングで音作りや録音環境などかなり違っている(と思われる)ため、そのままオリジナルから寄せ集めたらある程度手を入れられたとしても全体を通すと かなり「ちぐはぐ」なものになってしまっていただろう。

 

再録にあたって特にギターにアレンジが加えられ、コード進行の上にオリジナルにはないギターフレーズが入っていたり、ボーカルにはコーラスを重ねたり、曲によっては構成まで再アレンジされている。これらは全てアルバムの完成度に寄与している。

曲によっては今年からツアーで回っているバンドセットやオケには既に同じアレンジが加えられているため、このアルバムを先入観なしに聴けた人は現在のライブにもすんなり入っていけるだろう。

 

一方でいままで長年おやすみホログラムの音楽を追いかけていた人が聴くとこのアレンジには少し「違和感」を感じてしまうだろう。何を隠そう私もその一人だ。

 

この「違和感」について、言葉を慎重に選んで説明しても語弊が生じるので気持ちを記述するのは非常に難しい。それでも敢えて書くとすると、今回のベストアルバムは、それまでフロアで色々な想いを持ちながら体験してきた定番曲に対して持っていた「イメージ」と新録の「イメージ」との乖離が大きいところが「違和感」の根源だと思う。

 

USインディー・オルタナティブロックを感じさせる初期曲、手売りのCD-RもまるでAMラジオを通したようなローファイ音質。初期曲の後に、ドラムンベースのテイストを取り込んだ「TAB SONG」や、アコースティックジャズに振った「揺れた」など、音楽としての幅を感じさせる曲が次々に発表され、ライブに行くとまだまだ粗削りで危なっかしいが何かワクワクさせるものを感じた

 

人によって感じ方は違うと思うが、自分はそこに見たのは「脆さ」「儚さ」「仄暗さ」などのイメージだった。いつ壊れてもおかしくないバランスで、ただただその先に何があるのか見たかった。そしてそのあと続いた2nd、3rd、4thアルバムも音作りという点ではその延長線上にあるように思えた。

 


  • 2人体制初期の頃のライブ

 

それに対して今回のベストアルバムはそういった要素をざっくり切り捨てているように思える。

今までのアルバムの雰囲気が陰キャなら今回のベストアルバムの雰囲気は陽キャである。あの「underwater」も明るく演奏され、オリジナルは少し影を感じさせた「drifter」も完全に応援曲になっている。

 

5年前初めて「drifter」を聴いたとき、自分はブログにこう綴っている

そして曲が良い。メロディーが良い。少し暗めなところがなお良い。凄いとか奇麗とかではなく、何か心に沁みるのである。一聴してどうしてもこのグループの音源を手に入れたくなってしまった。

 

もし初めて聴いた「drifter」が今回の新録バージョンだったら、自分は5年前と同じ感情を抱けていただろうか?


まとめ ~「LAST DANCE」の意図するところ~

繰り返すがこの再録ベストアルバムの完成度は極めて高く、このままメジャーシーンに放り込んでも勝負できる良作だと思う。なにしろ完全に「マス」を意識した音作りだ。(これは、上から目線のいちファンのコメントであるのはご了承いただきたい。)

 

だが、これは今までおやすみホログラムサウンドを牽引してきた小川さんがやってきたサウンドメイキングとは違うものであり、過去作の方向性が大きく変わってしまっている。それが小川さんを含めた「意図」なのであるとしたら、今までの音を敬愛してきた我々は戸惑ってしまう。戸惑ってしまうのだ。そこが賛否の否の部分を大きく占めているのは間違いない。

 

そして、前回のツアーファイナルの最後に発表された「LAST DANCE」というツアータイトルと、その時に流された今までのおやすみホログラムの経緯をまとめたムービー。しかも前メンバーの解雇のところからまとめていたはずだ。これを素直に解釈すると活動終了や解散を仄めかしているというとらえ方ができる。もちろん現時点(2019/10/24現在) 公式からはツアーを行うこと以外の情報は一切出ていない。だが一方で11/30日以降の活動についても何もリリースされていない。普段ならそろそろ年末に向けたイベントがちらほら情報解禁されていてもおかしくはない時期である。

 

この「LAST DANCE」というタイトルが意味するのは何だろうか?

  • グループとして何らかの新しいステップへ進むのか?
  • 活動停止や解散するのか?
  • 現在アーティスト契約をしているフジパシフィックとの「LAST DANCE」なのか?

 

ただ、自分はこの問いに対するアンサーは今回の再録アルバム「1」にあると思っている。

過去と決別し、これからは今までのサウンドから脱却して 新たなステージに進むのではないだろうか?古臭いローファイでダウンピッキングでアヘッドなサウンドからは足を洗うのである。ショービジネスとして、より万人に愛されるサウンドを目指すことの何が悪いのか?

 

とにかくあまり考えても仕方ないので、今は来週から始まる各地でのツアーを楽しみ、そして11/30の横浜ベイホールで行われる千秋楽に臨みたいと思う。

 

 

 

 

 

 


ただ最後に、
一つだけ忘れないでほしいことがある。

 

 


小川さんはとてもいたずら好きである。